2014/06/01
“バイオファクター”
食品の第3次機能として注目される生体調節機能
緑茶には、野菜や果物と同様に、炭水化物、たんぱく質、脂質、各種ビタミン、ミネラルなどの栄養成分が含まれています。中でも注目すべきは、食品の新たな第3次の機能として研究が進む「生体調節機能」= “バイオファクター” と呼ばれる成分が豊富に含有していることにあります。この機能性成分は茶特有のもので、日本産緑茶には多量に含まれており、日本独自の蒸し製法を用いたことによって成分の消失が抑えられています。
食品の第1次機能 = 栄養補給
食品の第2次機能 = 味・香りなど味覚風味作用
食品の第3次機能 = 生体調節機能(カテキン類、アミノ酸類、カフェイン、他)
緑茶に含まれる”バイオファクター”
1929年、日本人農学者・辻村みちよ、などによって初めて緑茶から未知のカテキン類が次々に発見され、緑茶特有の成分であることが判った。主に渋味として感じる成分である緑茶のカテキンは、ビタミンCやEの数倍から数十倍の強い抗酸化作用を有している。他にも、抗菌作用、消臭作用、解毒作用など、疾病予防や老化防止など、人体にとって重要な効果があることが判っている。
1950年、日本人農学者・酒戸弥二郎によって初めて緑茶特有のアミノ酸・テアニンが発見された。主に、旨味として感じる成分であるテアニンは、抹茶やかぶせ茶などの上級茶に多く含まれ、心身をリラックスさせる効果を有している。テアニン摂取時の脳波の変化実験においては、脳内のα波の発生が顕著になることが確認されている。緑茶は興奮をもたらすカフェインと興奮を和らげるテアニン、作用が反する2つの物質を合わせ持つことから、リラックスしながらも適度の緊張を保ちたい時には最適の飲み物と言われている。
1891年ドイツ人医師・ルンゲによってコーヒーからカフェインが抽出された。主に苦味として感じる成分のカフェインは、中枢神経の刺激、腎臓などに作用して利尿を促進、胃酸分泌を促進して食物の消化を補助、体脂肪の分解など、多くの薬理効果が知られている。緑茶は他の飲料と比較してカフェイン量は多い傾向にあるが、テアニンを含むことから穏やかな効果となることが大きな特徴。
ビタミンCは分解されやすく体内に貯めておくことが困難な栄養素。欠乏時には免疫力の低下や壊血病などの発症原因の一つとなることから、日常的な摂取が欠かせない。緑茶では、上級な煎茶に多く含有され、ビタミンCの酸化による破壊をカテキン成分が防ぎ、水溶性であることから効果的な摂取が出来る。1日4〜5杯のお茶で、推奨量(1日100mg)の30〜50%の摂取が出来る。
緑茶は生活習慣病を予防する 〜カテキンの薬理効果〜
精神的・肉体的ストレスや喫煙、強い紫外線などで体内に発生する活性酸度を抑制。あらゆる細胞を傷つけることで生活習慣病を引き起こし、老化を進める原因の一つといわれている。
高血圧症が大きな原因の一つとなり発症する心筋梗塞などの循環器疾患では、血液中のアイイテギオシンノーゲンI型変換酵素が血圧を上昇させる原因の一つとなっている。
高血圧や動脈硬化、心筋梗塞、脳梗塞などの循環器疾患では、血液中のLDLコレステロールの酸化が血管を詰まらせる原因となり、発病のリスクを高めている。お茶のカテキン類の50%を占めるエピカロカテキンカレートはLDLコレステロールの酸化抑制と、HDLコレステロールの増加効果が確認されている。
カテキン摂取によるコレステロールの変化
一日7杯(600mg)/ 1週間間 摂取 |
= LDL酸化を抑制 |
一日6杯(400mg)/ 3ヶ月間 摂取 |
= HDLが増加 |
関連研究論文 /A Related Research Paper.
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茶葉中抗アレルギー成分,がん転移抑制成分の探索・評価および利用技術(ビタミン・バイオファクターの新展開 : 健康と食) Screening for Anti-Allergic and Anti-Cancer Metastatic Components in Tea Leaves Using Animal Cultured Cells and Effective Utilization 独立行政法人農業・生物系特定産業研究機構野菜茶業研究所 National Institute of Vegetable and Tea Science, National Agriculture and Bio-oriented Research Organization