伝統の茶種 “抹茶”
粉末状の茶種「抹茶」。抹茶の原料となるのは「碾茶」と呼ばれる茶葉です。碾茶は本玉露に近い覆い下製法を用いて栽培され、収穫前のおよそ30日間日光を遮りながら生育されます。収穫された旨味をたっぷり含んだ新芽を蒸した後、葉脈を取り除き、専用の炉で乾燥させて碾茶となります。その碾茶を石臼やセラミック臼で挽き、粉末状にしてふるいを掛けたものが抹茶となります。煎茶が生まれる以前から主に茶会で用いられ、日本の伝統文化に大きな影響を与えてきました。旨味、甘味、渋み、苦味がバランスした深い味わいを持つ、最も伝統的な茶種です。
薄茶と濃茶
抹茶には「薄茶と濃茶」二種類の点て方があります。抹茶の種類も、その用途に合わせて大きく「白」と「昔」2つの品質に分かれ、濃茶用の昔は、より旨味が多い碾茶で仕立てられています。
薄茶「白」
薄茶は、抹茶を茶碗に入れて湯を注ぎ、茶筌でかき混ぜ泡立てながら点てます。自然で鮮やかな緑色の中に、緑茶の爽やかでありながら凝縮した風味を味わうことが出来ます。現在、抹茶はとりわけ茶室の中だけのものではなく、茶筌と茶碗、そしてお湯さえあれば、リビングや屋外でも気軽に楽しむことが出来る、日常のカジュアルな飲み物としても楽しまれています。自然の中で行う茶会「野点」では、ピクニック気分のカジュアルなスタイルも広がり初めています。
濃茶「昔」
濃茶は文字通り、薄茶に比べて抹茶をおよそ2倍多めに使い、茶筌で練るように点てます。濃厚な濃茶はクリーム状に近く、上質な碾茶で作られた抹茶を用いることで、強い旨味に軽めの渋みと苦味がバランスし、他の緑茶とは全く異なる深い味わいがあります。茶会の席には、懐石料理や生菓子類など、軽めの食事が供されますが、実のところその本懐は、香しい濃茶を頂くことにあるのです。
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